2010.08.30
オーナー日記 2010年9月号
『星守る犬』(村上たかし著)の話です。 祖父母と3人で暮らしていた男の子がいましたが、彼が10歳のとき、おばさん が病気で亡くなってしまいました。寂しそうにしていた彼におじいさんが「今日 からお前の犬だ。世話をしなさい」といって連れて帰ってきた子犬を渡しました。
男の子は喜んでボールを投げたりして犬と遊んでいましたが、やがて大きくなる につれて他のことに興味が移っていき、犬と一緒に過ごすことは少なくなりました。
彼が18歳になったとき、おじいさんが脳卒中で倒れて急死してしまいました。お通夜 が終わって、ふと見ると犬がそばにいました。心配そうに彼を見つめています。そ目が合 ったとき、彼は気づきました。「おじいさんは、この日が来ることを思って、犬を家族の 一員に向かい入れたのだ」彼は犬を抱いて、そのぬくもりを感じながら涙を流しました。
4年後、犬も年をとって犬小屋で寝ていることが多くなりました。ある日、彼が犬小屋 の前を通ると、犬が最後の力を振り絞るように、ボールをくわえて彼に近づいてきまし た。
幼いときに遊んだように、彼がボールを投げてあげると嬉しそうにボールを拾おうとしま した。しかし、犬にその力は残っていませんでした。そのまま倒れて、死んでしまいまし た。「自分はこの犬に何をしてやれたのか?もっと、遊んでやればよかった。もっと、た っぷり散歩させてやればよかった。無理やり引っぱらず、気の済むまでガードレールやら 縁石やら電柱のにおいをかがせてやればよかった。もっと……恐れずに愛すればよかった ……」と彼は心から悔やみました。
当たり前のように、一緒に時間を過ごしてくれる人がいる。そんな時間は永遠 ではありません。大切な人を失ってから気づいたのでは、もったいないです。
中 山和義(なかやま かずよし)
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